前回、Deep Quartetを用いて環状ペプチドの低分子化を行いました。
本稿では、籠型骨格を生成するDeepCubist(文献1)を用いて環状ペプチドの低分子化を行ってみたいと思います。
文献1:Umedera K, Yoshimori A, Chen H, Kouji K, Nakamura N, Bajorath J. DeepCubist: Molecular Generator for Designing Peptidomimetics based on Complex three-dimensional scaffolds. J Comput Aided Mol Des 2022 Dec 3. doi: 10.1007/s10822-022-00493-y.
DeepCubistでは、まずは、炭素からなる籠型骨格を系統的に発生さます。次に、籠型骨格の側鎖の出る位置と、標的ペプチドのCa-Cb炭素を重ね合わせ、もっとも重なりのよい骨格を選択します(Stage 1)。Stage 1で選択された籠型骨格は、Transformerを用いてヘテロ原子が導入されます(Stage 2)。
画像処理の分野では、AI技術を用いて白黒写真からカラー写真への変換が行われています。Deep Cubistは、この変換技術にインスパイアされ、炭素からなる籠型骨格を白黒写真、ヘテロ原子の導入された籠型骨格をカラー写真に対応すると想定して、開発が行われました。
NNMTの環状ペプチドを標的ペプチドとして、DeepCubistを用いてヘテロ原子の導入された籠型骨格を生成しました。この籠型骨格に環状ペプチドの側鎖を付加した化合物(化合物 DC-01)と環状ペプチドの重ね合わせを図2に示します。結晶構造は、PDB(ID:7WMC)を利用しています。
化合物 DC-01は、環状ペプチドの主鎖のカルボニルとは合ってませんが、3つの側鎖構造(Arg3, HxG5, Trp6)との重なり度合いはとてもいいと思います。
籠型骨格ですので、骨格自体はリジッドであることが特徴です。ただし、実際に合成可能かというと非常に難しいと思われます。籠型骨格は天然物には多く存在していますし、医薬品開発においても重要なケミカルスペースだと思います。今後は、合成可能性の高い籠型骨格を生成できるAI創薬技術の開発を進めたいと考えています。
Category: AI創薬関連